書籍紹介
液相中で気液界面を新たに形成しながら「蒸発」が起きる現象が「沸騰」です。液体の中にある加熱された固体の表面で、この「沸騰」が起きる際の伝熱過程が「沸騰熱伝達」です。この「沸騰熱伝達」では、気泡や蒸気膜といった新たな気液界面が形成され、これらが複雑な運動を行うことで熱伝達が行われる特別な「構造」を持つことになります。
この「沸騰熱伝達」、その「構造」に関する技術的な知識と正確な計算は、蒸留やボイラーなどの熱設計など、ありとあらゆる沸騰が関わる幅広い産業・技術分野で必須のものです。
この本は、この沸騰熱伝達とその構造についての概論としてまとめられた元・東京大学生産技術研究所所長・副学長 西尾茂文先生によるセミナー資料(1990年自主制作発行)を書籍化するものです。
これから沸騰研究に従事する若手研究者(学部学生や大学院生)や技術者が、沸騰現象の基本となる素過程の物理・化学的理解と沸騰熱伝達特性の概要を把握する際のテキストとなるものです。
1990年以降の沸騰に関する新たな知見は含まれていませんが、沸騰現象の素過程や沸騰熱伝達基本構造の内容は普遍的なものであり、特にこれから沸騰研究開発に取り組もうとする方にとって、非常に貴重な内容となります。
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印刷版 ¥4,500 小売希望価格(税別)
発行日:2018/03/23
発行社:インプレスR&D
ページ数:272(印刷版)
ISBN:9784844398110
序文
第1章 蒸発・沸騰現象と沸騰熱伝達
1.1 沸騰熱伝達の諸相
1.2 蒸発・沸騰現象
1.3 沸騰熱伝達の基本構造
蒸発・沸騰現象概論
第2章 気液平衡、蒸発および濡れ
2.1 気液の平衡
2.2 蒸発の動力学
2.3 濡れ
第3章 気泡核生成
3.1 自発核生成と沸騰核生成
3.2 自発核生成
3.3 液相の過熱限界
3.4 沸騰核生成
第4章 気泡成長と界面安定性
4.1 気泡成長理論
4.2 気液界面安定性
沸騰熱伝達概論
第5章 沸騰開始
5.1 理想沸騰面における気泡初生
5.2 現実沸騰面における核沸騰開始
第6章 核沸騰熱伝達
6.1 核沸騰熱伝達の基本構造
6.2 固体表面近傍の不均一温度場における気泡成長
6.3 気泡サイクル
6.4 気泡ユニット
6.5 核沸騰熱伝達モデル
6.6 核沸騰熱伝達の特性
第7章 膜沸騰熱伝達
7.1 膜沸騰熱伝達の基本構造
7.2 平滑界面・層流蒸気膜を有する自然対流膜沸騰熱伝達
7.3 波状界面・層流蒸気膜を有する膜沸騰熱伝達
7.4 膜沸騰熱伝達の特性
第8章 遷移沸騰熱伝達
8.1 遷移沸騰熱伝達の基本構造
8.2 固液接触の存在を限定する諸機構
8.3 遷移沸騰熱伝達モデル
8.4 遷移沸騰熱伝達の特性
記号表および参考文献
編集後記
1949年 岐阜県出身
1977年 東京大学大学院工学系研究科博士課程 (舶用機械工学専攻)修了 工学博士
1995年 東京大学 教授(生産技術研究所)
2002年 東京大学 生産技術研究所 所長
2005年 東京大学 理事・副学長
現 在 東京大学 名誉教授
専 攻:熱事象学,熱制御工学,エネルギー工学,科学技術論
<主な受賞歴>
日本伝熱学会学術賞(1990),日本機械学会賞(論文賞)(1994,2004),日本冷凍空調学会論文賞(2000),日本機械学会熱工学部門業績賞(2001),日本機械学会熱工学部門研究功績賞(2009),日本伝熱学会功労賞(2011)