書籍紹介
本書は、国際大学GLOCOMが2018年8月28日に開催した「平成30年著作権法改正 ~「柔軟な権利制限規定」の意義と今後の課題~」シンポジウムにもとづいて編纂したものです。
平成30年著作権法改正法は、2018年5月18日に成立し、2019年1月から施行されました。教育・アーカイブに関する権利制限など、注目すべき改正が多数盛り込まれましたが、最も注目されるのは、いわゆる「柔軟な権利制限規定」の整備です。日本版フェアユース規定の必要性が議論され始めてから、実に10年を超える歳月を要した成果でもあるのです。米国においてフェアユースとして認められた事案がすべてカバーされるうえ、米国に比べて予測可能性に優れるとの積極的な評価も見受けられます。その一方で、法文上は、必ずしも明らかとは言えない「享受を目的としない利用」(30条の4)、「軽微な利用」(47条の5)などの要件がどのように解釈されるのか、きわめて注目されるところです。
こうしたなか、GLOCOMでは、著作権法の研究者・実務家を招き、「柔軟な権利制限規定」の意義と解釈、今後の課題などについて議論しました。
本書は、著作権法の改正において、日本版フェアユースの展開を理解するうえで、とりわけ有益な一冊です。
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電子版 ¥1,200 小売希望価格(税別)
印刷版 ¥1,500 小売希望価格(税別)
発行日:2019/03/29
発行社:インプレスR&D
ページ数:100(印刷版)
ISBN:9784844396970
はじめに
第1章 改正法をめぐる文化庁との折衝、自民党内での議論
1.1 文化庁との折衝(阿達雅志)/1.2 自民党内での議論(三宅伸吾)
第2章 平成30年著作権法改正――「柔軟な権利制限規定」の意義と今後の課題(中山信弘)
2.1 20世紀の著作権法と21世紀の著作権法/2.2 個別権利制限規定の限界 ほか
第3章 改正法における「柔軟な権利制限規定」の意義と課題(上野達弘)
3.1 柔軟な権利制限規定とは/3.2 柔軟性が高い権利制限規定(第一層) ほか
第4章 著作権法の行く手――平成30年改正が描く未来像(島並良)
4.1 法規範の柔軟性とは――2つの視点/4.2 法実務への影響 ほか
第5章 著作権法のバッファ(椙山敬士)
5.1 権利/権利制限の関係(二分論と三分論)/5.2 はるかに重要な価値 ほか
第6章 英米法との比較
6.1 アメリカのフェアユースとの比較、市場の観点から(潮海久雄)/6.2 イギリス、カナダのフェアディーリングとの比較(谷川和幸)
第7章 パネルディスカッションを終えて(石新智規)
7.1 はじめに/7.2 改正著作権法30条の4の柔軟な解釈――楽曲利用の事例 ほか
付録 改正著作権法はAI・IoT時代に対応できるのか?(城所岩生)
1.はじめに/2.米国の新技術・新サービス関連判決 ほか
著者一覧(執筆順)
編著者:城所 岩生(きどころ いわお)
国際大学GLOCOM客員教授、米国弁護士(ニューヨーク州、首都ワシントン)。東京大学法学部卒業、ニューヨーク大学修士(経営学・法学)。NTTアメリカ上席副社長、成蹊大学法学部教授、サンタクララ大学客員研究員などを歴任。情報通信法に精通した国際IT弁護士として活躍。
主な著作として、『米国通信改革法解説』(木鐸社、2003年)、『著作権法がソーシャルメディアを殺す』(PHP新書、2013年)、『フェアユースは経済を救う』(インプレスR&D、2016年)、『JASRACと著作権、これでいいのか』(ポエムピース、2018年)、『音楽はどこへ消えた、2019法改正で見えたJASRACと音楽教室問題』(みらいパブリッシング、2018年)などがある。